1 パート・有期労働法の改正条項について

(不合理な待遇の禁止)

第八条 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)

第九条 事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。

2 パート・有期労働法第8条(均衡待遇)にいう不合理な待遇の禁止の意味について

1.正規・非正規社員との不合理な待遇差を禁止している。

2.不合理な待遇差とは、待遇の性質及び目的に照らして、不合理性判断の3考慮要素(職務内容、職務内容及び配置の変更の範囲、その他の事情)による待遇差が不合理性となる場合である。

3.正規・非正規社員で問題となる例の多くは均衡待遇である。

3 パート・有期労働法第9条(均等待遇)の通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止の意味について

1.雇用関係終了までの全期間において、考慮要素である「職務の内容」及び「職務の内容及び配置の変更の範囲(人材活用の仕組み)」が同じ場合には差別的取扱いが禁止される。

2.中小企業の場合は、正社員と非正規社員の間では「職務の内容及び配置の変更の範囲(人材活用の仕組み)」に差異がないことが多いので、「職務の内容」に差異がなければ差別的取扱いとされる。

4 パート・有期労働法第14条2項の待遇差の説明について

1.非正規社員は、「正社員との待遇差の内容や理由」など、自身の待遇につ いて説明を求めることができるようになった。又 事業主は、非正規社員から説明の求めがあった場合は、説明をしなければならない。

2. 説明の方法は、各種待遇差の決定基準の違いに基づき説明する。例えば、基本給の平均額や賃金テーブルに基づき説明する。又は手当の標準額や最高額・最低額を示して具体的に説明する。

5 パート・有期法第8条(均等待遇)の改正ポイントについて

1.正社員と非正規社員の不合理な待遇差の是正を判例に基づいてルール化したもの。

2.「同一労働同一賃金」とは、労働が同一であれば賃金が同一であるという意味ではなく、正社員と非正規社員の不合理な相違を禁止したもの。

3.不合理な相違とは、正社員と非正規社員との間の待遇差について説明ができないような相違は許されないとしたもの。

6 中小企業の計画的対応について

 1.短期的対応として、 正社員・非正規社員の各種手当等の待遇差を把握し、待遇差の相違を説明できるように準備をする。

2 中期的対応として、賞与・退職金制度の待遇差の見直しを検討する。又有期労働者の無期転換制度及び限定正社員制度の構築を検討する。

3 長期的対応として、正社員・非正規社員との基本給の待遇差を確認し、待遇差を説明できるように等級制度や人事制度の見直しを検討する。又定年後再雇用社員についても均衡待遇は求められるので、その対応を踏まえて70歳までの高齢者雇用制度の構築を検討する。

7 不合理な待遇差解消に係る取組手順について

1.各種待遇の性質・目的を明らかにする。

2.待遇差が、①職務の内容、②職務の内容及び配置の変更の範囲(人材活用の仕組み)、➂その他の事情の考慮要素のうち、どの考慮要素に基づくものなのか明らかにする。

3.待遇の性質・目的を踏まえて、考慮要素による待遇差の理由を社員に説明することができるか否かを検討する。

4.待遇差を説明することができなけれが、不合理な待遇差となるため待遇差の解消を検討する。

8 2018年の2判決(ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件)の意義について

1.同一労働同一賃金の基本的な解釈枠組みを示した。

2.不合理な判断は労働条件ごとに行う(ハマキョウレックス事件)。

3.不合理な相違とは、相違があることを説明できるか否かで判断する(ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件)。

4. 定年後再雇用の不合理性の判断は、「その他の事情」とした(長澤運輸事件)。

9 2020年5大判決について

1.賞与・退職金(大阪期医科薬科大学事件、メトロコマース事件)

2.年末年始勤務手当(特殊業務手当)、祝日給、夏季冬季休暇(特別休暇)(日本郵便3事件)

3.年末年始勤務手当(特殊業務手当)、祝日給、夏季冬季休暇(特別休暇)(日本郵便3事件)

4. 基本給(大阪医科歯科大学事件、メトロコマース事件、日本郵便(佐賀)事件)